翻訳の大地

できるだけ「翻訳」にまつわる様々な話題をとりいれて書いていくつもりです。

2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ワープロと翻訳業界(その18)

せっかくA社に J-Star の現場を見せていただいたのですが、弊社はJ-Star の導入を見送りました。 その最大の理由は、売値(単価)の問題でした。当時より、IT翻訳は、医薬翻訳よりも付加価値(単価)が低かったからでした。 翻訳の量で言えば、圧倒的にI…

ワープロと翻訳業界(その17)

1986年当時、A社は医薬専門の翻訳を行う翻訳会社で、弊社はIT分野が中心の翻訳会社でした。ITと言っても、当時ITという言葉はなかったため、「コンピュータや通信を中心とする電機分野の技術翻訳を得意とする会社」と名乗っていました。 そのため、A…

ワープロと翻訳業界(その16)

もし、J-Star を採用するとしたら、最低でも3台は購入して、既存のワープロオペレーターを教育するだけでなく、即戦力となる J-Star のプロフェッショナルオペレーターも新規に採用しなければなりません。 すでに大手翻訳会社や中堅どころの印刷会社は、J-St…

ワープロと翻訳業界(その15)

私が初めてJ-Starを見たのは、おそらく富士ゼロックスのショールームだったかと記憶していますが、マウスを動かすとディスプレイ上のポインタが動き、クリックで操作ができるということに驚きました。 しかし、もっと驚いたのはその値段でした。 Wang も CPT…

ワープロと翻訳業界(14)

1980年代、日本の翻訳業界では、ごく一部の翻訳会社が英文ワードプロセッサーを使っていましたが、その主流は、IBMディスプレイライターから、Wang や CPT へと一挙に移行していきました。 私の知るところでは、Wang のシェアが圧倒的に高かったと思います。…

ワープロと翻訳業界(その13)

当時、うまく「切り貼り」をするには、職人芸とも思えるワザが必要でした。 まずは、切り貼り用のプラスチック製のマットとカッターナイフが必要です。そのマットは、切り貼り専用に作られているため、紙を乗せ上からカッターナイフで切り刻んでもマットに傷…

ワープロと翻訳業界(その12)

当時は、ワープロソフトを搭載したパソコンと電動タイプライターのキーボードを打つ音がオフィスに鳴り響き、2台あった大型コピーマシンも常時フル稼働して実に“うるさい”会社でした。 メールがない時代ですから、在宅翻訳者や顧客からの電話のベルが鳴り響…

ワープロと翻訳業界(その11)

トレーサーがトレーシングペーパーに清書した「図形」をコピーマシンでコピーを取ります。 ちなみに「図形」の種類と言えば、エンジニアの書いた設計図、回路図、外観図、グラフ、等々が多かったでした。 白い紙にコピーをした図形には、文字を打ち込むスペ…

ワープロと翻訳業界(その10)

トレーサーは、専用の机の上でカラス口やロットリングや雲形定規などを使いトレースをしました。 「専用の机」とは、机の表面が半透明の白い曇りガラスでできていて、中に蛍光灯が入っているトレース台のことです。 トレーサーは原文をその机の上に置き、さ…

ワープロと翻訳業界(その9)

さて、日本のワープロがアメリカ製のソフトウェア、つまりマイクロソフトのMS-Wordに集約されていくところまでお話しました。 ところで文書というものは、テキスト(文章)と図(写真も含む)と表の3つで構成されています。 ワープロの普及により、テキスト…

ワープロと翻訳業界(その8)

NECのPC98シリーズは、一時期、日本のパソコンシェアの過半数以上を占めていて、その天下はしばらく続きました。 また、パソコンに搭載するワープロソフトも一太郎のほかにも、次から次へと様々な種類のソフトウェアが発売されました。記憶に残っているも…

ワープロと翻訳業界(その7)

今までハードウェアのワープロの話をしてきましたが、日本のワープロ業界に彗星のごとく現れ、日本のワープロ事情を一変させたのがあの「一太郎」でした。 ちょうど時期を同じくして、1980年代にNECのPC9800シリーズというパソコンが爆発的なヒットを飛ばし…

ワープロと翻訳業界(その6)

1980年代、ワープロはハードウェアという考えが常識でした。 オフィスにワープロとパソコンが並んでいても、私たち日本人は明確に、一方はワープロ、一方はパソコンだからまったく違うものと考えていました。 パソコンは計算をする道具で、ワープロは文書を…

ワープロと翻訳業界(その5)

1982年5月に富士通から、100万円を切る日本語ワープロが発売されると、各電機メーカーが先を競って新機種を市場に投入し始めました。 富士通、日本電気、東芝、シャープ、日立、沖電気、カシオ、ソニー・・・・等々、すごい勢いで新機種が発売され、値段も急…

ワープロと翻訳業界(その4)

日本語ワープロが100万円を切って話題となりましたが、そこからはすさまじい勢いで値段が急降下し、性能が急上昇していきました。 私の記憶では、日本語ワープロより半年ほど早くFAXがやはり100万円を切り、急速に価格が下落し、同時に性能が急上昇してい…

ワープロと翻訳業界(その3)

当時、ワープロというのは機械でした。 機械というのも変なのですが、要するにソフトウェアではなく、ハードウェアだったということです。 以前触れた、英語のワープロとして、IBMディスプレイライター、ワング、CPTなどが1980年代の日本で売られてい…

ワープロと翻訳業界(その2)

英文ワードプロセッサが突如日本の翻訳業界に現れ普及し始めたのが1980年~1981年頃でした。 前回触れたように、1台400万円以上でメンテナンス費用も消耗品もバカ高い金額の英文ワープロでしたが、その後、急速に普及し、突如として翻訳業界を席巻してし…